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第4回 これからの時代に必要なスキルとは?

  • 連載 大川翔
  • 2019.4.9

大川翔(おおかわ・しょう)

1999年生まれ。5歳のときカナダへ。9歳でカナダ政府にギフティッドと認定され、12歳で中学を飛び級し高校へ進学。2014年春、ブリティッシュ・コロンビア大学(UBC)、マギル大学、トロント大学などカナダ名門5大学に奨学金付きで合格し、話題となる。同年6月、14歳でトーマス・ヘイニー高校を卒業し、同年9月にUBCへ入学。2015年1月、カナダ政府からカナダ総督アカデミック・メダル賞受賞。2016年12月、UBCサイエンス学部長賞受賞。2017年夏、アメリカ・グラッドストーン研究所(山中伸弥教授)にてインターンを経験。2018年5月、18歳でUBCを卒業(バイオロジー・オナーズ)。同年7月、孫正義育英財団第2期生に合格。8月から、東京大学先端科学技術研究センター(谷内江望准教授)にて研究を開始する。2019年4月、19歳で慶應義塾大学大学院(修士課程)に入学。著書に『ザ・ギフティッド 14歳でカナダのトップ大学に合格した天才児の勉強法』(扶桑社)、『僕が14歳で名門5大学に合格したわけ』(学研プラス)がある。

読み・書き・英語・プログラミング

これからの時代に必要なスキルとはどんなものでしょうか? 昔は「読み・書き・そろばん」が重要だと言われていました。基礎学力(社会で生きていくために必要な能力)として要求されるのは、母国語の習得および計算能力だったということです。今でも基本は変わっていないと思いますが、そうした基礎学力に加え、時代の変遷とともに、社会が求めるスキルというものが新たに登場してきています。僕が思うに、これからの時代に必要なスキルは、英語とプログラミングです。そして、学習の方法としてアクティブラーニング(※1)が重視されると思います。

小学校での英語教育は、2011年度に小学5年生から必修となり、小学3年生からの必修化および小学5年生からの教科化が2020年度に実施されます。同じく、2020年度には、小学校でプログラミング教育が必修化されると聞いています。アクティブラーニングとは、学習者が主体となって能動的に学習する学習方法のことで、北米では盛んに実施されています。僕はカナダの学校に通い、授業を受けたので、アクティブラーニングで学んだひとりといえるかもしれません。僕がお会いした下村博文文部科学省大臣(当時)も、2014年の文部科学省中央教育審議会にて、アクティブラーニングについて言及しています。これは日本でも本格的に導入されていくことになるのではないでしょうか。

こうした状況を見るに、身につけるべき基礎学力は同じだとしても、学び方や、付加される学習の内容が時代に合わせて激変している気がします。

(※1)アクティブラーニング:学習者である生徒が能動的に学ぶことができるような授業を行う学習方法。生徒による体験学習やグループディスカッション、ディベート、グループワークを中心とする授業のこと。

A.I.が変える未来

世の中の変化を見回すと、A.I.(人工知能)の開発が急速に進むであろうことは容易に想像できます。そうなると、単純作業は機械(AI)に置き換わっていく可能性が非常に高いです。いままで人間がやっていた作業をロボットなどの機械がやることになります。IoT(※2)(モノが機械になっていく時代)の到来です。 IoTとはInternet of Things の略で、訳して「モノのインターネット」と呼ばれるものです。

この定義は「センサーをあらゆる場所に配置し『モノ』を世界中のインターネットに結びつける」というところからきています。具体的には、車の自動運転や、メスを使わない医療、ドローンを使った宅配の無人化などです。

「全てのモノが機械になっていく」時代において、プログラミングは、どんな業界でも活かすことのできるスキルといえるかもしれません。あらゆるもののAI化が進んでいるため、どんな仕事についたとしても知識を役立てることができるからです。しかし、時代を担うIT人材の需要が高まる一方で、人材不足は年々深刻化しています。特に、将来圧倒的に足りなくなるのが「プログラマー」だといわれています。そのため、プログラミングのスキルを身につけておくことで、就職活動のときに有利になったり、職場で重宝されたりすると思います。

(※2)IoT:1999年に、無線タグの標準化団体「Auto-ID」創設者の一人であるケビン・アストン氏が提唱したとされる。この場合の「モノ」は業界用語で人間・動物・自然といった生命体以外の「全てのモノ」を指す。

僕がプログラミングの勉強を始めた理由

さて、僕がなぜプログラミングの勉強を始めたのか、という話をしましょう。将来要求されるスキルだから。確かにその通りです。僕が今取り組んでいる研究分野は合成生物学といわれるもので、プログラミングからのアプローチがひとつの手法になります。プログラミングは、単純作業の高速処理や自動処理を得意とするので、研究に欠かせないスキルといえるかもしれません。

でも、みなさんには本当のことを言いましょう。僕がプログラミングの勉強を始めたのは、「プログラミングが面白いから」です。

楽天の執行役員である北川拓也博士にお会いしたとき、「僕の行動原理はワクワクすることをするってことだ」というお話をしていただきました。北川拓也博士は何をする時も、とても楽しそうに取り組んでいます。僕の周り、例えば孫正義育英財団生のメンバーにも、プログラミングを得意とする方がたくさんいますが、彼らもまた、その技術が将来必要になるからという理由で始めたわけではないのです。

学校で必修化されるから、将来必要とされるスキルだから、という理由で学ぶことは、本来の楽しさを奪ってしまうかもしれないと思うのです。せっかく始めたのに、嫌いになってしまうなんてことが起きるかもしれません。いくらプログラミングに将来性があるといっても、プログラミングを学んだ人全員がプログラマーになったり、ロボットに携わったりするわけではありません。プログラム言語を仕事で使う人は限られているでしょうし、専門的な知識は全く使わない人の方が多数派だと思います。

プログラミングの面白さ

みなさんはプログラミングに対して、どんなイメージをお持ちでしょうか?「これからはプログラミングの時代だ」とか「プログラミングを覚えておくと良い」、「これからはプログラミングができないと何かと不便だ」という話はよく聞きます。プログラミングを学ぶメリットとして言われていることは、「ものをつくる楽しさがある」「問題解決力がつく」「パズルを組み立てるような面白さを味わえる」「制作物を人に使ってもらう喜びを感じられる」「アイディアを実現していくやりがいが得られる」、こんなところでしょうか?

いままでの学校の勉強は、言われたことをできるようにする、社会的なルールを学ぶという意味合いが大きかったと思います。しかし、プログラミングは、学んだ内容をもとに自分で方法を組み立て、指示通りに動いてくれるシステムを作るというものです。指示がうまくいかなければ、システムもうまく動きません。だからこそ、失敗とチャレンジを繰り返してうまくいったときには、成功体験を得られます。人に指示されてやらされたのではなく、自分で考え、つくりあげたものだという自信や達成感を得ることができます。また、コンピューター言語は英語が基礎になっているので、英語の勉強にも役立ちます。その上、受け身ではなく行動することが求められるアクティブラーニングとの相性も非常によいです。

「難しい」を「楽しい」に変えるには?

さて、これまでプログラミングの楽しさや、プログラミングを学ぶメリットについてお話ししてきましたが、「でも、プログラミングって難しそう」と思っている方も多いかもしれません。初心者でもプログラミングを楽しく学ぶためには、どうしたらよいでしょうか?

次回はプログラミングをはじめ、難しそうな習い事を楽しく学ぶにはどうしたらよいか、僕の経験からお話しをしたいと思います。

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